短歌研究社刊 最新刊歌集・歌書

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『天意』

桑原正紀歌集『天意』

2010.8.12刊/四六版/192頁
定価2,916円(本体2,700円)
ISBN 978-4-86272-211-9

短歌研究賞受賞・第七歌集。
「病を得て現世的な苦痛や苦悩から解放された妻
 彼女とともにいると「浄土」を思い「菩薩」を思う
 いま、私は妻から多くのものを与えられている」(帯より)

雨後の空にかかれるおほきおほき虹 妻よこの世はまだ美しい
早退けの理由は「妻の日光浴」笑はば笑へわれも可笑しい
はらはらと散る花を浴びほほゑめる妻はも菩薩ここ花浄土
残されし牡猫がいつのまにか来て牝猫の死をしきりに嗅げり
終末をはなやぐごとき酔芙蓉 かういふ老いもあらむ、あるべし
妻のゐる棄老病棟に降る月光ちさきちひさき花びらと見ゆ


『蓬歳断想録』

島田修三歌集『蓬歳断想録』

2010.7.30刊/A5版/208頁
定価3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-86272-202-7

せわしなく茫々と流れ過ぎる日々─「さびしくひろき人の世」の実感は深まりゆくばかりだ。
虚実を織りまぜた断想歌篇に日々の実感がなまなましくにじむ。

夜のほどろ俺はめざめて冬の水の濛きにのみどを潤すかなや
甘やかに薫るピースの両切りを夕べ喫むなり ああ生きてゐる
母親の恩愛といふしがらみのうしろ手に閉ぢ霊安室扉
日々を揺れ男どき女どきのさざ波もどうでもいいや燗酒うまし
祖父といふ怪しきものに俺はなり仔犬のごときを懐ふかく抱く
飯粒の輪郭しるき新米を食うぶる朝ぞさきはひのごとし


薔薇図譜

三井修歌集『薔薇図譜』

2010.7.21刊/A5判/240頁
定価3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-86272-203-4

この世の余白へ─砂時計返せり遥かなる追憶のため─

薔薇図譜に薔薇溢れいてわが兄はこの冬深く眠りていたり
病棟の屋上冬の日が射して ああ、まるでこの世の余白のようだ
兄逝けば死ははや我の視野に入る冬の高空雲の迅しも
あまりそう深く取るなという声が踏みたるガムのように従きくる
春風の街に買いたる空色のブルゾンを着れば翔べる気がする


アシンメトリ

遠藤由季歌集『アシンメトリー』

かりん叢書
2010.8.31刊/四六判/184頁
定価2,700円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-217-1

第1回中城ふみ子賞、今年度かりん賞受賞者の待望の第一歌集
遠藤の作品には、日常の感情の起伏や男女の愛を起点として、より深く、より普遍的に人間世界をとらえなおそうという素志 があり、その素志が自然に展開されたさまを見ることができる。すべてを言い切っているのではない。暗示力に富むおだやかな表現をもって、読者をものごとの本質にいざなう。(坂井修一・解説より)

馬頭星雲抱くオリオンが昇るころコンロの青き火揺らして待てり
雪の日に苺が点るおかしさよなんでもあるはなにもなきこと
奪われた涙腺のようゆうぐれの水槽に餌をつつくらんちゅう
裕福な夕陽とみすぼらしい朝陽 旅人は履く朝陽に靴を
翅ひろげ飛び立つ前の姿なす悲という文字のアシンメトリー
溶けたいと願うきみではなくなって胸元の雪ほつりと溶かす


夏母

大野道夫歌集『夏母』

2010.8.15刊/四六判/184頁/
定価2,700円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-215-7

大学で社会学を勉強し、教えているという日々の生活、「心の花」内外の研究会や歌会、そして遠くグローバル 化した世界の中での戦争やテロ、国内の貧困や若者の問題なども本歌集に反映している、と考えられる。(著者)

びんらでぃん 焦がし反してタタミイワシ生きてるどこかで反る びぃんらでぃん
拍手なき献杯旧友の弔辞うねり来ず同僚は 自死だったのか
駈け降り君は「好き」と囁く真昼間の灯火自転車のようなさみしさ
一年とはたとえば君が右から左へ薬指輪を嵌め換える円
爪切りが ない 通帳が ない 父さんが ない 母だけが い る 家


芒種の雨

田中子之吉歌集『生きてさまざま』

泱叢書
2010.7.29刊/A5判/208頁
定価3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-86272-207-2

写実に徹して「どこまで人間性の深層に迫り得るか」を作歌の根幹とし、師 佐藤佐太郎の「主観を駆使して対象に接した」抒情性をもとめて、みずからを凝視する――――「泱」主宰の第六歌集
独自な歌境をさらに深めつつ、人の存在とその心の襞をドラマチックに描き出す。それは妻の“死”にまでも及ぶ。

入念に化粧する少女虚と実に創造さるる始終を見たり
直線の白き廊下の果てに射す西日は翳ることなき孤独
亡きひとを偲ばんよすが四照花は今年より二階の窓越えて咲く
希死念慮ときに独りの夜に来て死の道平坦に見えて顕つとぞ
移りゆく時間はかくも峙つや妻の余命を知らされてより
戯れの如くにわが手を求め来し妻の手病み臥す昼夜に温し


縁もつもの

竹田美智子歌集『縁もつもの』

2010.9.7刊/四六判/184頁
定価2,700円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-212-6

教職を辞した後に短歌を始め、夫君の闘病と逝去という悲しみをこえた著者―― 「その面影が今もなお、どこにでもある」と語る夫への思いが中心となる第一歌集。(跋・奈賀美和子)

大樹なる楠の若葉の定めなき激しき揺れは風のときめき
黙したるままに夫は階上る共に過ごしし年月思ふ
惜しみつつ欠けたる皿を今朝は捨つ縁もつものまた一つ消ゆ
亡き夫を語るわが声いつ知らずほのぼのとしてこの身をつつむ


水の輪廻

藤吉宏子歌集『水の輪廻』

歌と評論叢書
2010.8.20刊/A5判/208頁
定価3,240円(本体3,000円)
ISBN 978-4-86272-210-2

阿蘇の水源に降った雨がせせらぎとなり、やがては筑後川となって有明海にそそぐ。その「水の輪廻」とふるさと筑後への思いを籠めた『鶴唳』につづく第四歌集。

掌に乗るほどの靴はかせられ子は草萌えの大地を踏めり
烏瓜ひけば曳かるる手ごたへは地球を手繰る幻想いだく
いさぎよき引き際なりと佇ちつくす寒夕焼けの消ゆる一瞬
しらひわけ筑紫次郎よとことはに水の輪廻の命をつなげ


銀の鑷子

渡邉範子歌集『銀の鑷子』

富士叢書
2010.8.19刊/四六判/264頁
定価2,571円(本体2,381円)
ISBN 978-4-86272-201-0

「鑷子」とは医療用のピンセット、看護師の著者の分身ともいえる。「母として、妻として、職業人として、すべてを素直に受容する自立した一人の女性」(川﨑勝信「跋」)と評された著者の第一歌集。

幸福の木の花の香が病院に甘く満ちたりみんな帰りぬ
わが夫を「先生」と呼ぶ境界線共に白衣をつけて歩めり
「かつ飛ばせ」娘と明るく応援歌歌へば夏の乙女よ我も
晴れ渡る青空広し口ずさむ自在の歌は独り言めく


風

佐藤詣子歌集『風』

槻の木叢書
2010.8.1刊/四六判/248頁
定価2,700円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-214-0

母への深い思いを核として、家族の歌、様々な自然を見せてくれる山の歌、国内外の旅の歌、四季日常の歌など。折々の感動・情景を甦らせつつ編んだ第一歌集。(序・来嶋靖生)

初夏の空の青さは母の色我育みし母のこころか
朝仰ぐ九重三俣山の厳しさよひろごる緑のゆらぐともなし
もろ手振りスキップしつつハイジよ走れスイスの山を緑の原を
吹く風に争ひもせずゆれゆれて烏瓜の蔓空に伸びゆく


夏の曲線

相澤美惠子歌集『夏の曲線』

2010.7.23刊/A5判/232頁
定価3,024円(本体2,800円)
ISBN 978-4-86272-209-6

「『夏の曲線』のイメージするものは、輝かしさや逞しさと柔軟性であり、行く先へのダイナミックな印象を彷彿とさせている。誠なる充実感を暗示させているとも言えよう。」(伝田幸子「跋」)

洗ひ立ての木綿のやうな風が吹き五月の最初のページが開く
運転をしてゐる君の手に渡すクッキーひとつ五グラムの愛
林立のビルの硝子の一つより夕日はわたしにサインをくれる
夕光にせなを押されて駆けてくる初夏の風ごと児を胸にだく


夏の曲線

佐藤絹子歌集『伊根の舟屋』

素馨叢書
2010.7.23刊/四六判/200頁
定価2,700円(本体2,500円)
ISBN 978-4-86272-213-3

「恐山・諏訪・鳴門…日本の原風景を訪ねつづけた第二歌集である。本集はまた、高齢の母君を案じ、
その最期に至る日々をも歌い、著者の真情を伝えている。」     (石川恭子)

舟屋巡りの最終の船夏の陽は入り江に高く照り返しおり
山を背に伊根の舟屋は小さくて格納できぬ大型漁船
齢には悔いはなけれど母の命永久にと祈る叶わぬことを
ひたすらに眠れる母のまくらべの桜の写真は故郷の山